なぜ、子どもの気持ちの尊重が大切なのか
「なぜ、子どもの気持ちの尊重が大切なのか」、この問いにシンプルに答えるなら、
たとえ幼少期の子どもであっても、人格を持った一人の人間であるから。
大人の未成熟な状態ではなく、子どもは子どもとして生きているから。
こんな答えが浮かびあがってきます。
しかし、近年特に「子どもの気持ちの尊重」が問われるようになった背景には、
子どもの尊厳以外に、社会の急速な変化もあるように思います。
例えば、学習指導要領では、「主体的・対話的で深い学び」が大きなテーマとして掲げられ、その実現のために、「知識及び技能」「思考力・判断力・表現力」「学びに向かう人間性等」という、3つの柱が示されています。
不透明な時代を生きる子ども達には、「自ら」考え、「自ら」行動していくことが重要ということです。
このような流れを受けて、保育・教育、更には子育てにおいても、
「子どもの主体性や自主性」について、今まで以上に問われるようになってきたのでしょう。
ガリガリ勉強させるのは違うと思う。
親がレールを敷くのも違うと思う。
それよりも、子どもの気持ちを尊重して、子どもが好きな道を見つけて進んでいくことを応援したい!
このような家庭が増えてきているということです。
複雑化する子育て
しかし、子どもの気持ちを尊重し、必要なサポートを提供する…、
理想的なこの子育て観には、難しさも伴います。
「子どもの気持ち」と「親の願い」にはズレがあるからです。
子ども任せにしていると、親の望む方向に進まないこと、
求める結果まで到達できないことが、往々にあるからです。
「公園で遊ばない?」
「行きたくない」
「本を読んであげようか」
「テレビの方がいい」
「かけっこしようか」
「疲れた」
例えば、このような場面で子どもの気持ちを優先していると、結果、子どもの経験まで不足してしまいそう…。
「帰ろうよ」
「やだ〜、まだ遊ぶ〜」
「ご飯の時間よ」
「おやつを先に食べたい〜」
子どもがゴネ始めたときには、どうしましょう。
「ダメなものはダメ!」と言ってしまえば済むのかもしれませんが、
どこかで「言い過ぎてはいけない」という自分もいたりして…。
子どもへの関わり方には、悩んでしまいます。
言いたいことを言えない。
親がどこまで決めていいのかわからない。
子育ての悩みは複雑化しているように感じます。
自分なりの「線引き」に向かう3つのポイント
もちろん、子どもの年齢によっても、一人ひとりの個性によっても、
更にはその時々の子どもの気持ちによっても、「親がどこまで関与するか」は変わってきます。
「どこまで子どもの意見を受け入れる?」に対しても、残念ながら「このくらい」という基準はなく、
状況に応じて自分で決めていくしかないのです。
ここでは、自分なりの「線引き」に向かうためのポイントを3点ご紹介します。
1.「加減」をみる
例えば、お風呂に入る時の湯加減、皆さんはどのように「ちょうど良さ」を見つけていますか?
恐らくお湯に手入れて、熱ければ水を足す。
冷たければもっと沸かす。
実際に触ってみて(試してみて)、その後調整していらっしゃることと思います。
子どもへの関わりに関しても、この湯加減みたいなところがあるように感じます。
最初から白黒はっきり決めてしまうのではなく、まずは子どもの言い分を受け入れてみる。
そして様子を見て、「これは言っている通りに動かないな」と判断するなら、親側の意見を取り入れる。
あるいは、「私の考えとは異なるけど、子どもの考えに任せてもよさそう」と思えるなら、
多少のうまくいかなさはあったとしても、子どもの主張を通す。
試してみて、その後修正。
あえて「線引き」を決めずに、やりながら決めていく。
これなら、ストレスなく子どもの気持ちの尊重に向かっていけそうです。
2.仕掛けを工夫する
無気力な子どもに、もっと広い世界を見てもらいたいと願うこと。
ゴネている子どもに、前向きな気分になってもらいたいと願うこと。
これらは、否定する感情ではありません。
むしろ、子どもの気分を変えるきっかけを作ることができれば、
子どもはより豊かな経験を積むことができるでしょう。
子どもが「気持ちを切り替える」、そんな仕掛けを作っていきます。
例えば、子どもの「好き」に焦点を当てます。
虫好きな子なら、「ダンゴムシを探しに、外に出てみようか」と誘ってみます。
ちょっとしたきっかけで、さっきまで「家にいたい」と言っていた子どもが、急いで靴を履き出すかもしれません。
いつもとは異なる「素材」は、子どもの関心を引き寄せます。
ゴロゴロしながらテレビを見ている子どもでも、
「大きなダンボールを好きに使っていいよ」と言われれば、動き出すかもしれません。
形もいろいろ、大きさもさまざま。
遊び方が決まっていない廃材には、素材としての珍しさ、楽しさがたくさん詰まっています。
お願いをするのも良いでしょう。
「お母さん、疲れちゃったので、洗濯物を畳んでくれるかな」、
こんな一言も、気分を変えるきっかけになるかもしれません。
子どもの気持ち自体が切り替われば、「線引き」の必要もなく、子どもの気持ちの尊重ができます。
3.子どもに聞いてみる
子どもの意見を受け入れるのか、自分の意見を通すのか…。
そこで、悩んでしまうのなら、実際に子どもに聞いてみてはどうでしょう。
他者とともに生きる社会には、対立する意見があるのは当然のこと。
無理に合わせようとしたり、無理に変えさせようとするのではなく、
「お母さんはこう思うんだけど、どうしたらいいかな」と、子どもの意見を聞いてみます。
社会性を身につける、よい機会にもなりそうです。
幼少期の子どもは、突然の質問に答えられないこともあるでしょう。
そんな時には、横に座ってみてください。
子どもの様子を横から眺めていると、言語化されない子どもの気持ちが見えてきたりするものです。
自分の思いを丁寧に伝え、子どもの気持ちも丁寧に汲み取る。
こんな関わり合いの中で、どこまで関与するか、最適な線引きのラインが見えてくるように思います。
最後に、親が絶対に介入しなければならない場面もあることをお伝えしておきます。
安全や健康に影響を与える場合です。
例えば、危険な行動や食生活、睡眠習慣などは、親の介入が不可欠です。
子どもの気持ちを理解した上で、しっかりと正しい意見を伝えていってくださいね。
記事執筆
江藤真規
https://saita-coordination.com/
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