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「聴く」の効果 − 幼少期の子どもの言語環境を整える

子ども達の心には、話したいことが沢山あります。
特に、保育園・幼稚園からの帰り道などは、聴いてもらいたいことがいっぱいです。

しかし、現代社会には、子どもの話を聴いてあげる「人」が不足しています。
「人」がいたとして、子どもの話を聴く余裕がなかったりします。

それでも、子どもにとっては「聴いてもらう経験」がとても重要です。
子どもの話を聴くことの大切さと、
聴ける親になるための工夫について考えていきましょう。

幼少期の子どもの言語環境を整える

子どもが生まれたその日から、親としての日常が始まります。
子育ては誰に教えられるわけでもなく、私達は無意識に自分が育ってきた環境を真似、
子育てをしていきます。

自分が育ってきた環境が、自分の子育てに再現されるということです。
とても素敵なことであり、意識をせねばならないことがあると感じます。
それは、以前は存在していた地域社会の存在がなくなりつつあるということです。

過去の時代、子どもは親以外の大勢の人々に囲まれ生きていました。
地域のおじいちゃん、おばあちゃんと言葉を交わすことも多かったでしょう。
放課後は、地域の子どもたちと群れて遊びました。

学校では「読み書きそろばん」、学校が終わってからは
「話すこと」「聴くこと」の時間だったとも言えるでしょう。
豊かな言語環境が保障されていた時代です。

今どきの子どもたちは、どのような言語環境にいるのでしょう。
ゲームをやったり動画を見たり、一人で楽しむ環境はあるのでしょうが、
言語環境を考えてみると、決して豊かとは言えないと感じます。

言語環境の中でも、幼少期の子どもにとって、特に必要なのが、「話すこと、聴くこと」。

今どきの子どもには、意識をしなければ豊かな言語環境が整わないということを理解した上で、
家庭では「話すこと、聴くこと」に意識を向けていきたいものです。

「聴く」の効果

話を聴いてもらうと、どのようないいことがあるのでしょう。
まずは、聴く人がいるから、子どもは話すことができるということです。

話すとは、心の中にあることを言語化して吐き出すこと。
ストレス発散にもなりますし、思考の整理にもつながります。

話をしながら、自分の考えを客観視したり、
行動を起こすためのエネルギーを得ることもできるでしょう。
主体的な人生を生きるためには欠かせない行為です。

また、聴いてもらうとは、自分の話に共感的に寄り添ってもらうという行為でもあります。
聴いてもらうという経験は、「受け入れてもらった」という気持ちにつながります。
この気持が、人生の基盤となる自己肯定感、
あるがままの自分を受け入れる自己受容感を育みます。

更に、自分の話を聴いてもらった子どもは、
他者の話を「聴く」こともできるようになります。
コミュニケーション力は、今という時代を生き抜くには、
とても重要な力です。

もう一点、「聴く」を意識すれば、本の読みきかせの質を高めたり、
子どもに気づきを与えることもできるようになるはずです。

「聴く」は、人生の基盤であり、学びの基盤とも言えるのでしょう。
子どもの話を否定せずに、批判せずに聴いてあげましょう。

わが子の話を「聴く」ことの難しさ

それでも、「聴く」は難しく、特にわが子の話を聴くのは簡単なことではありません。
「聴く」を難しくしている要因を考えてみましょう。

1. 忙しくて聴く時間がとれない
2. 子どもの意見を受け入れることができずに聴いていられない
3. 子どもの話が長くて最後まで聴いていられない

いろいろな理由があるかと思いますが、親の方が「聴く」を意識することで、
これらの難しさは、解決したりするものです。

上記の難しさの解決法をご紹介しましょう。

1. 忙しくて聴く時間がとれない

時間を確保しましょう。
おやつを食べる時間は「聴く」時間。
園からの帰り道は「聴く」時間。

このように、「聴く」ための時間を確保すると良いでしょう。
できない理由ではなく、できる方法を探せば、きっと10分程度の時間は確保できると思います。

2. 子どもの意見を受け入れることができずに聴いていられない

賛成しなくても大丈夫。
「あなたはそう感じるのね」と、
子どもが感じ取っていることを共感しながら聴いてあげましょう。
共感と賛成(同感)を区別して考えれば、きっとお子さんの話を聴けるようになるはずです。

3. 子どもの話が長くて最後まで聴いていられない

大人もそうですが、話をしていると、どんどん思考が広がっていき、
話の内容がスライドしていくことがあるものです。
幼少期の子どもの場合、語彙数がまだ少ないため、
言いたいことを伝えるには時間を要することもよくあります。

子どもの話を聴く時間は、「要件を聴く時間」ではありません。
子どもとの対話を楽しむ時間と理解して、話があっちこっちにとんでも気にしないことが大切です。

話が延々と続き、聴いている時間がなくなってしまったら、
「とっても楽しい話をありがとう、お仕事の時間になってしまったので続きは後で聴かせてね」等、
遮らずに終えるための工夫を考えてみてください。

上手な聴き手になるための技術

「聴く」のゴールは、相手が「聞いてもらっている」と感じること。
上手な聴き手になるためには、スキルの活用も役立ちます。

ここでは、「聴く」スキルを紹介致しましょう。
「聴いているつもり」を脱却するためには、基本に立ち返り、
スキルを使ってみることがお勧めです。

アイコンタクト

基本的な姿勢です。聴く際には相手の目を見て聴くことが大切です。

あいづち、うなづき

「私はあなたの言葉を聴いています」というメッセージが相手に伝わります。
子どもは話しやすくなるはずです。

あいづちは音楽で言うところの手拍子のようなもの。
手拍子があった方がノリよく歌えますよね。

おうむ返し

「今日は何をして遊んだのかな?」
「今日はお砂場で恐竜を作ったよ」
「お砂場で恐竜をつくったのね!」

このように、全く同じ言葉を繰り返すのがオウム返しです。
自分を理解してくれている、受け止めてくれているという気持ちが、
子どもの「もっと話したい」という気持ちを引き出します。

沈黙を受け止める

投げかけたことに子どもが応答しない時、即座に大人側から答えを提示していませんか?
問われたことを吟味し、自分の経験を振り返り、
言葉のポケットから的確な言葉を探し出すには時間がかかります。

そして、そのプロセスこそが、表現力や思考力の基盤となります。
「沈黙=わからない」と決めつけずに、子どもが応えるまで待ってあげる姿勢が大切です。

ペーシング

聴くためには、相手にペースを合わせることが大切です。
相手の息づかいを感じながら呼吸を合わせる。
声の高低、スピード、強弱、明るさと暗さなど声を合わせる。
相手にペースを合わせることで、スムーズに会話が流れます。

「聴く」で子どもの心を交通整理する

今の時代、幼少期の子どもも忙しい日々を送っているようです。
オンライン学習の伸展とともに習い事の数は増加、楽しくも疲れているというのが、
今どきの子どもの実態かもしれません。

確かに充実した日常なのだと思いますが、子どもの思考には、
少し交通整理が必要とも感じます。

「聴く」ことで子どもに話をしてもらう、これが思考の交通整理です。

皆さんにも、誰かと話をすることで、「そうだった」と
自分なりに気づいた経験がありませんか?

自分で話しながら自分で気づいていくことをオートクラインといいますが、
聴く人がいて、話すことができれば、人は抱えているものの整理をし、
自分なりに気づいていくことができるのです。

子どもも一緒です。
思考の交通整理をしてすっきりすれば、次は何をすればいいのかも見えてくるのだと思います。
自分で納得しながら行動できそうです。

「聴く」を子育ての日常に意識的に組み込み、豊かな言語環境を作ってみてくださいね。

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