クロワール幼児教室

子育ての1丁目1番地は「聴く」

読む、書く、話す、聴く。この4つの技能の中で、特に学ぶ機会がないのが「聴く」ことです。
見方を変えれば、「聴く」に関しては、個人が自分流に、聴いているということ。

しかし実際には、「聴く」はとても難しく、
実は「聴いているつもりで聴けていない」という場面も多々あるもの。

幼児期の子育てにおいて、特に重要な「聴く」について、改めて深めていきましょう。

「聴く」を意識すれば、本の読みきかせの質を高めたり、
子どもに気づきを与えることもできるようになるはずです。
沢山聴いてもらった子どもは、他者の心も聴ける子に育つでしょう。

子育ての1丁目1番地は「聴く」と言っても過言ではありません。

アウトプットに欠かせない「聴く」

学校教育や民間教育と、家庭教育の違いは何でしょうか。
インプットとアウトプットの違いと、私は考えます。

学校や塾では、ありったけの知識をインプットしてきます(覚えてきます)。
家庭では…というと、子ども達は、家族と対話をしたり、自由時間を過ごしながら、
外で学んできた知識をアウトプットしています。

アウトプットばかりでは、そのうち許容量はいっぱいになってしまいます。
アウトプットとインプットが交互に為されるからこそ、人は学び続けることができるのです。
そう考えると、家庭において、子どもがアウトプットする経験はとても大切です。

具体的なアウトプット行為と言えば、話すこと。
子どもには、沢山話す機会をもたせてあげたいものです。

そして、そのためには必要なのが、「聴き手」の存在。
独り言を言いづける…、壁に向かって話し続ける…、これらは到底できることではありません。

家族が子どもの話を「聴く」役になるとは、子どもの学びを加速させるためにも、
とても重要ということ。

親が聴き上手になることで、家庭教育は圧倒的にパワフルになります。

「聴く」のスキル

「聴くなんて簡単」

と感じる方もおいでになるかもしれません。
しかし、「聴くこと」は実はとても難しく、私もコーチングの学習を通して
「聴く」を本格的に学んだ際に、その難しさに初めて気づきました。

「聴く」のゴールは、子どもが「聴いてもらっている」と感じること。

自分が聴いているか否かではなく、相手がどう感じているかが成果です。
自分は「聴いている」、しかし相手は「聴いてもらっているとは感じていない」。
これでは単に、「聴いているつもり」になっているだけ…。

良い聴き手になるには、基本に立ち返り、スキルを使ってみることがお勧めです。
知っていることも多いかと思いますが、以下にいくつかのスキルを紹介します。

アイコンタクト

基本的な姿勢です。聴く際には相手の目を見て聴くことが大切です。

あいづち、うなづき

あいづち、うなづきをすることで、
「私はあなたの言葉を聴いています」というメッセージが伝わります。
相手は話しやすくなるはずです。
あいづちは音楽で言うところの手拍子のようなものとも言われています。
手拍子があった方がノリよく歌えますよね。

おうむ返し

「今日はどんなことして遊んだのかな?」

「今日は公園にいったよ」

「公園にいったのね!」

このように、全く同じ言葉を繰り返すのがオウム返しです。
自分を理解してくれている、受け止めてくれているという気持ちが、
子どもの「もっと話したい」という気持ちを引き出します。

沈黙を受け止める

投げかけたことに子どもが応答しない時、即座に大人側から答えを提示していませんか?

問われたことを理解し、自分の経験を振り返り、
言葉のポケットから的確な言葉を探し出すには時間がかかります。

そして、そのプロセスこそが、表現力や思考力の基盤となります。
「沈黙=わからない」と決めつけずに、子どもが応えるまで待ってあげる姿勢が大切です。

ペーシング

聴くためには、相手にペースを合わせることが大切です。

相手の息づかいを感じながら呼吸を合わせる。
声の高低、スピード、強弱、明るさと暗さなど声を合わせる。

相手にペースを合わせることで、スムーズに会話が流れます。

最初から最後まで聴く

話が長い子の場合、ずっと聴いているわけにもいきませんよね。
しかし、「いつまで喋っているの」とこちら側から遮ることは避けた方がいいでしょう。

子どもは自分の話したいことを話し切ると自分が大切にされたと感じ、
次に進めるような気持ちになるからです。
いつもとはいかなくとも、時間があるときには、
「全部話した」と子どもが感じるまで付き合ってあげましょう。

忙しい時には、「時計の針が◯になるまで聴くね、続きは夜聞かせてね」など、
工夫をしてみてください。

日常生活で取り入れられる工夫

「うちの子は、まだ言葉を話し始めたばかりで、会話が長く続きません」

もちろんこのような場合にも「聴く」は重要なのですが、
確かに親子会話だけでは、「聴く」も「話す」も楽しくなくなってしまうかもしれません。

ちょっとした工夫を取り入れることで、「話す」を楽しくしていきましょう。
日常生活で取り入れられる工夫をご紹介します。

絵本を広げて「聴く」

絵本を一緒に読むことの大切さは言うまでもありません。
生後最初の数年間にどのくらい子どもに本を読むかは、学校入学時の準備度に影響を与え、
最終的にはその子の人生の道筋にも大きな影響を及ぼすとも言われています。

とは言え、大人が読み聞かせをしてあげていても、

・子どもがどんどんページをめくってしまう
・じっと座っていない
・自分で本を持ちたがり邪魔をする

など、うちの子は本が嫌いだと感じてしまう場面もきっとあるはずです。
こんな時には、大人の中にある「正しい読み方」を外すことがお勧めです。

大人の目からしてみれば、到底本を読んでいるとは思えない光景でも、
子どもは子どもなりに本の時間を楽しんでいる可能性があります。
「本が嫌いな子」と決め付けるのではなく、本に親しみをもたせる機会を作ることが大切です。

そして、子どもが本の世界にはいってきた時が「聴く」のチャンスです。

とはいえ「これは何?」と記憶を問いただすのではなく、
静かに傍らに寄り添い、同じ景色を見るようなイメージで、
子どもの心の中にある景色を聴いていきましょう。
何も言わずとも、隣に座って子どもと同じ絵を見る。一緒に笑う。一緒に驚いてみる…。

子どもが何かを話したら、同じ言葉を繰り返してみる。
「なるほどね」「そうだよね」と共感する。
大人側の世界に子どもを引っ張ってくるのではなく、大人が子どもの世界に入っていきましょう。

子どもの世界に焦点を当てて話を聴いていくと、子どもは空想しながら沢山のことを
話してくれるようになります。子どもは話すことを大いに楽しむことでしょう。

子どもから教えてもらう

今の時代、小さな子どもも忙しい日々を送っているようです。
オンライン学習の伸展とともに習い事の数は増加、楽しくも疲れているというのが、
今どきの子どもの実態かもしれません。

確かに充実した日常なのだと思いますが、子どもの心の中はどうなっているのかと考えると、
少し交通整理が必要な気もします。

いろんなものが沢山入りすぎていると、欲しい時に欲しいものが見つかりません。
言葉さえも出てこなくなってしまいます。

こんな時にお勧めなのが、子どもを先生に見立てて、「教えてもらう」こと
正解ありきで、大人が子どもに確認をしていくのではなく、

親

「これ、どうしたらいいのか教えてくれる?」

と子どもに聴いてみましょう。

子ども
子ども

「これは、こうやってね、ここをもっているとうまくいくよ」

など、子どもは一生懸命大人に説明をします。「話す」ということです。
また、説明するとは、まとまった知識を整理しながら話すということ。
自分で思考の交通整理もできるでしょう。

何より、自分の説明が相手に伝わった、喜んでもらったという経験が、
子どもの自己肯定感を高めます。


是非、家庭時間で取り入れてみてください。

相互尊重の大切さ

相手がどれだけ小さな子どもであっても、一人の人間として尊重する。
今この子はこう感じているのだと受け止める。
これは、子育てにおいて、とても大切な考え方です。

そして、子どもを尊重する行為は、「聴く」によって成り立っていると感じます。

親だからといって、自分の当たり前を子どもに強要することなく、
子どもの世界を大切にしていきましょう。子どもの話を聴いてあげましょう。

沢山聴いてもらって育った子どもは、必ず「聴き上手」となっていくはずです。

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